狂った隣人たち

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窓を開けると夜風が気持ちよく室内に入り込んできた。


くるみは自室の窓を開けた状態で、右手にスマホを持っていた。


その向かい側の家の窓の向こうには、同じように窓を開けてスマホを手にする祐次の姿がある。


祐次と付き合い始めて一週間が過ぎていた。


2人はこうして窓を開けて、時折視線を交わしながらメッセージのやりとりをすることに夢中だった。


会話は行き帰りに十分しているので、家に戻ってからはこうして互いにメッセージのやりとりに没頭するようになった。


くるみは祐次から送られてきたメッセージを読み、顔を上げて祐次と視線を交わし、そして微笑む。


祐次もくるみからのメッセージを読み、そして顔を上げて微笑む。


そんなやりとりが続けられていたとき、不意に祐次の家から怒号が聞こえてきて2人の指が同時に止まった。


祐次はくるみへ向けて「ごめん」と断りを入れると部屋を出て行ってしまう。


バタバタと階段を駆け下りる音がくるみの部屋まで聞こえてきた。


どうしたんだろう……?


一抹の不安を覚えて、くるみはスマホを胸の前で握り締めたのだった。