「うるせぇくそばばぁ!!」


まだ声変わりもしていない弘人が精一杯の大声を張り上げている。


今までも口が悪いことは多々あったけれど、あんな怒鳴り方をしたことはなかった。


祐次は恥じかれたように椅子から立ち上がると、そのまま階下へと駆け下りた。


リビングのドアを開けて中に飛び込むと、弘人が自分の上半身を隠してしまう大きさの椅子を振り上げているのが見えた。


その先には母親が床に座り込んでいる。


「なにしてんだよ!!」


祐次が弘人の後ろに回りこみ、その体を両手で羽交い絞めにした。


「離せよ!!」


暴れる弘人を力でねじ伏せると、椅子が音を立てて落下した。


床に座り込んだ母親は目に涙を浮かべて震えている。


その様子に怒りがこみ上げてきた。


祐次は弘人の体を床に押し付け、「母さんになにした!」と怒鳴る。


「うるせぇな! 俺の勝手だろ!」


「ちゃんと謝れ!」