狂った隣人たち

夕飯の支度が終わるまで勉強をしようと机に向かった祐次だけれど、どうしても視線は窓の外へ向かってしまう。


くるみの部屋の電気は消えていて、今は誰もいないことがわかった。


リビングで家族と過ごしているのだろうか。


ようやく勉強道具を取り出して集中していても、ふと視界の端に窓が移ると顔を向ける。


そしてまだくるみの姿がないことを確認すると、安心して勉強に戻る。


そんなことを繰り返していたから、今日の復習はいつもの倍くらい時間がかかってしまった。


祐次はう~んと両手を天井へ伸ばして伸びをする。


こんなことじゃダメだ。


そう思うのに頬は自然とニヤけてしまう。


最初くるみに会ったときは誰だか覚えていなかったけれど、あの後アルバムを見ているとどんどん思い出していった。


くるみは幼稚園でも同じ組になったことがあって、その中でも一番の泣き虫だった。


戦隊ヒーローに憧れていた俺は毎日なにかしらで泣いているくるみをいつも見ていたように思う。


廊下でこけて先生に助けられているくるみを見て、いつか先生より先にくるみを助けるんだと思っていたのだ。


浅野にイジメられているくるみを目撃したのは、そんな矢先のことだった。


張り切ってくるみを助けに行ったから、くるみの方もその印象が強く残っていたようだ。


思い出したら少し恥ずかしくなるようなキメゼリフを言っていたような気もする。


当時のことを懐かしく思い出していた時、ふいに1階から怒号が聞こえてきて現実に引き戻された。