狂った隣人たち

☆☆☆

晴れて恋人同士になった2人だったが、余計にお互いのことを意識してしまってぎこちない雰囲気が流れていた。


「そ、そろそろ帰ろうかな」


リビングに戻って残りのクッキーを食べ終わった頃、くるみはソファから立ち上がった。


祐次は名残惜しそうな表情を浮かべているが、引き止める材料もなくなってしまっ
たようで「そうだな」と、うなづく。


廊下へ出たときダンボールが視界に入ってくるみは思わず足を止めた。


リビングや2階の廊下にはダンボールはつみあがっていなかったのに、ここだけ残されているのが気になった。


「たぶん、その和室は使わないんだと思う」


くるみが気にしていることに気がついて祐次が言った。


「え、どうして?」


「さぁ、わからないけど。いつまでたってもその荷物だけは片付けられてないから、たぶん使わないんだろうなって思って」


それならダンボールは和室内に入れておけばいいのに。


疑問に感じたけれど、他の家の事情なのだからこれ以上は口を挟まないことにした。


「それじゃ、今日はありがとう」


「こっちこそありがとう。驚かせてごめんね」


照れ笑いを浮かべる祐次に手を振り、くるみは大神家を出たのだった。