狂った隣人たち

「憧れ?」


「そう。向こうの窓に好きな子の部屋があるっていうシチュエーション」


普通にうなづきそうになって、くるみは「え?」と聞き返す。


今『好きな子の部屋』って言った?


それって比ゆ表現とかそういうやつじゃなくて?


思考回路がついていかず、くるみは視線を漂わせる。


すると祐次がくるみの両肩を掴み、自分のほうへとくるみの体を向けさせた。


至近距離で祐次に見つめられたくるみはすぐさま真っ赤になってしまう。


うつむきそうになったくるみのアゴを祐次の手が押し上げる。


そして「好きだよ」と、ささやくような声で言った。


その声はくるみに届き、くるみの鼓膜を、そして全身を振るわせた。


憧れだった祐次が自分のことを好きだと言っている。


こんな奇跡あるだろか?


祐次の整った顔が徐々に近づいてきて、くるみはそっと目を閉じた。