ベッドから降りて窓のカーテンを開けて路地を見下ろして見る。


すると引越しのトラックが隣の家の前に止まっているのが見えたのだ。


青い制服と帽子をかぶった作業員たちが沢山の段ボール箱を運び出しているのが見えて、くるみははじかれたように階下へと走った。


リビングのドアを激しく開けて中へ入ると、家族全員が大きな窓から外を見つめていた。


「これ、どういうこと?」


母親の隣まで移動して質問すると、青白い顔をした母親は左右に首を振っただけだった。


「また引っ越してきたんだよ」


答えたのは聡子だった。


聡子は睨みつけるように窓の向こうの隣家を見つめている。


まだカーテンのかかっていない窓の向こうには、引越し作業員が動き回る姿が見えている。


「まさか、こんなに早く引っ越してくるなんてな」


父親がうめくような声で言い、ソファに腰をかけた。


それを合図にしたようにみんな窓から離れていく。


くるみもソファに座り「もしかして事故物件だって知らないのかもしれない」と、呟く。


「確かにそうだけど、一ヶ月前におきた事件のことだからさすがに知ってるんじゃない?」


キッチンで麦茶を入れてきた聡子が言う。


「知ってて引っ越してくるの?」


くるみは納得できない様子で眉間にシワを寄せている。


「世の中には物好きな人だっているよ。わざと事故物件を探してそこに暮らすの」


聡子は麦茶を一口飲んで、履き捨てるように言った。


確か、そういう映画が人気になったところをくるみは思い出す。