ゲームが最初の画面から全然進んでいないのだ。


プレイしているように見えてしていない。


弘人の顔をしっかり確認してみると、目にうっすらと涙が浮かんでいるのがわかった。


俺は弘人の隣に座りその体を両手で抱きしめた。


思っていたよりも筋肉がついてきていて少し驚く。


抱き上げた時のズッシリ感を思い出しても、大人に近づいてきているのだということがわかった。


「なにすんだよ!」


文句は言っても暴れない。


弘人の中でも思うことが沢山あるからだろう。


「大丈夫。弘人には兄ちゃんがついてるから。いつでもそばにいるし、勉強も見てやるし友達にもなってやる」


言っているそばから弘人はボロボロと涙を流し始めた。


金曜日、最後の登校日の6時間目に弘人のお別れ会が催されたらしい。


その時からずっと弘人は泣くのを我慢していたのだ。


祐次も考え悩んだ末に学校を変えることにしたけれど、弘人にとってはそれは強制的なものだった。


学区が変われば学校もかわるしかない。


それはとても理不尽なことだったはずだ。


祐次は弘人の涙が止まるまでずっと、そうしていたのだった。