和宏は江澤家の長男として生まれてきた。


分娩室で大きな泣き声を上げる赤ん坊に、待機していた親族たちはみんな安堵の表情を浮かべた。


和宏の父。


母方の両親、父方の両親と、勢ぞろいしている。


産声が聞こえてから少しして看護師が声をかけにきた。


その表情は明るいが、一族とは視線を合わせようとはしなかった。


このとき、和宏の父親だけはなにか違和感を覚えていた。


あの看護師は妻が入院中にもよくしてくれた人で、今のように視線をそらすようなことは今まで1度もなかったからだ。


そしてその疑問は、わが子との初対面のときにすぐにわかることとなる。


この子は普通じゃない。


それは顔を見れば歴然としていた。


母親似とか、父親似とか、そういうんじゃない。


病気の子供特有の顔というのが出てくるときがある。


まさしく、それだったのだ。


そのためかわが子を自分の胸に抱いたとき、父親は奇妙な感情にとらわれた。


こんなことを言ったら非難されるが、同じ人間なのに、まるで宇宙人を抱いている気分になったのだ。