狂った隣人たち

すぐ真下でその音が止まり、くるみは祐次の服の袖をきつく掴んだ。


その時、なにかが出てきた。


ヌッと床下から伸ばされたそれは手のように見えた。


黒い斑点が浮かび上がり、皮膚の半分が剥がれ落ちてところどころ骨が見えている。


異臭は更に強烈さを増して呼吸をすることも苦しくなってきた。


床下から伸びてきた手は徐々にその全貌を現していく。


最初は指先。


指先から手。


手から腕。


そして肩。


次に真っ黒く変色した頭部が出現したとき、くるみはその場に座り込んでしまっていた。


腐りかけた肉体を持つその人物は完全に床下から姿を現した。


その人物が動くたびに腐った肉がボトボトと落下していく。


「お、お前か。俺の夢に出てきていたのは」


祐次がスコップを両手で握り締めて相手と対峙した。


その瞬間くるみはここで見た白い服の男性を思い出していた。


汚れと劣化でひどい状態になっているが、目の前にいるその人物も元々は白い服を着ていたことがわかる。


ということは、この人物が江澤さんか。


ここで殺されて、犯人である長男は逃亡。


その後魂は残り続けて、こんな姿になってしまったのか。