狂った隣人たち

なにかがこちらへ向けて、這って近づいてきている音だ。


音の正体を理解した瞬間呼吸をすることも忘れていた。


全身が冷たく凍りつき、恐怖で視界がぼやけてみえた。


「おい、早く電話!」


祐次の叫び声で我に返ってスマホを操作しようとする。


その時、震える手からスマホが落ちてしまった。


くるみの白いスマホは畳の上で小さくバウンドし、そのまま穴へと吸い込まれるようにして落ちてしまったのだ。


「あ!!」


よりによって、穴の中に。


くるみの目に絶望の色が浮かぶ。


「俺が警察に連絡する」


祐次はくるみを壁際へと押しやり、スマホを取り出した。


床下から聞こえてくる音はどんどん大きくなってくる。


ズルッズルッズルッ。


その音が大きくなるにしたがって、異臭も更に強くなっていくのがわかった。


この臭いの正体がすぐそばにいる。


くるみは祐次の背中ごしに穴を凝視していた。


目をそらすことができない。


ズルッ。