狂った隣人たち

畳が上げられてお札がむき出しになった和室は異様な光景を放っていた。


誰がどう見ても危険な場所で、そんな場所の更に奥へと進んでいこうとしているのだ。


くるみはゴクリと唾を飲み込んで手の汗をズボンでぬぐった。


祐次が大きく息を吸い込んで、床板と床板の隙間にスコップを突き刺した。


スコップの先端、たった数ミリだけがその中に入り込む。


テコの原理で力を込めてみると、床板はメリメリと音を立てて少しだけ浮いたようだ。


それでも人の指が入るほどの隙間はできていない。


祐次はもう一度スコップを構えて同じように力をこめる。


今度はメリメリ、バキッ! と音がして、スコップを突き刺していた部分だけ割れてしまった。


「床板も替えてないんだろうし、もろくなってるな」


それでも人の親指が入るくらいの大きさの穴が開いたため、祐次はその場に膝を着いて穴に手を伸ばした。


「このまま引き剥がせたらいいけど、さすがに無理そうだな」


指に力を込めて板を剥がそうとするが、びくともしない。


立ち上がり、もう1度スコップを手にしたその瞬間だった。


ひどい腐臭が鼻腔を刺激して2人は同時に鼻を抑えていた。


「なにこれ、ひどい臭い」


くるみは顔をしかめている。


呼吸をするたびに吐き気がこみ上げてくるような悪臭だ。