「新しい入居が決まったときに、大家が剥がしているんじゃないか? お札がある家なんてあからさますぎるだろ」


そうなのかもしれない。


でも、もう1つくるみには気になっていることがあった。


「あの部屋で江澤さんたちが殺されたとして、どうして畳の下から手が出てきたんだと思う?」


「それは、幽霊だからだろ? 俺たちを驚かせるためにやったんだ」


「本当にそうかな? それなら別に部屋の中にいたって押入れの中にいたっていいじゃない? むしろ幽霊の顔が見えたほうが怖いと思う。だけど、手だけだった」


あれにはなにか理由があるのではないかと思っていたのだ。


手だけでも十分怖かったけれど、本気で人を脅かすならもっとやり方はあったはずだ。


祐次はくるみの意見に首をかしげていたが、やがて決意したように息を吸い込んだ。


「どうせあの家には戻らないといけないもんな。俺が暮らしてるんだから」


だから、もう1度和室へ入ってみよう。


祐次はそう言ったのだった。