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「あの部屋に死体があったことは確実みたいだね」


近くのファミレスに移動してきて20分ほどが経過していた。


まだ気持ちは荒れていたけれど、暖かい飲み物を注文したことで寒気は治まっていた。


「あぁ。あんなに気持ちが悪い部屋なんだ。母親が荷物を片付けられなかった理由もやっとわかったよ」


今まで和室には用事もなかったし、ろくに確認してみることもなかった。


「あの部屋の前にはタダンボールでふさがれていたけれど、相手は幽霊だからそんなことも関係ないもんね。姿を見せることもなく、祐次たちの家族に悪い影響を与えることができる」


「塞ぐなら、お札かなにかの方がよかったんだな」


祐次は暖かいお茶を飲み干してようやく一息ついたように言った。


くるみは今の祐次の発言に瞬きをした。


「お札って、どうして貼られてなかったんだろう?」


「え?」


くるみの質問の意味がわからなかったようで、祐次は首をかしげる。


「だって、今まで引っ越してきた人たちだって、最初はなにも知らなかったとしても、だんだんおかしいなって感じていたはずでしょう? その中で、あの和室に入った人だってきっと沢山いる。それなのに、お札は貼られていなかったよね?」


言われてみればそうだ。


入った瞬間に気分が悪くなるような部屋だけれど、お札の類は見当たらなかった。