「早く! 早くあけて!!」


「今やってる!」


手は2人の目前まで迫ってきていた。


手はまるでそこに目玉がついているかのようにくるみの目の前で動きを止めた。


そして、バンッ!!


畳に思いっきり手が打ち付けられたのと、くるみは悲鳴をあげたのと、襖が開いたのはほぼ同時だった。


大きな音を立てることで自分の存在を知らせた手はそのままスッと消えてなくなり、祐次とくるみの2人は和室の外へと転がり出た。


そのままの勢いで玄関まで向かい、靴を掴んで家の外へ出る。


そうしてようやく足を止めることができた。


しかし体に絡み付いた異臭と寒気は簡単には取り除くことはできず、2人はしばらくその場で抱き合って棒立ちになっていたのだった。