狂った隣人たち

「今度の家はここよりも大きくて、庭もついているんだぞ！」


ひとり感慨にふけっているとドアの外から父親の声が聞こえてきた。


「だけど借家でしょう？　ここと同じじゃん」


文句を言っているのは弟の弘人だ。


弘人は今小学５年生で生意気盛りだ。


今回の引越しも納得できていないようで、散々両親に文句を言っていた。


祐次は部屋を出るとリビングへ向かい、まだ仏頂面でいる弘人の体を後ろから抱き上げた。


「うわっ！　なにすんだよ！」


突然両脇に腕を差し込まれて持ち上げられた弘人は宙に浮いたままで暴れる。


「そんなに暴れていいのか？　落ちるぞ？」


意地悪い声で言うと弘人はすぐに大人しくなった。


前に同じことをして本当に落とされたことがあるからだ。


といってもその時も祐次の故意で落としたわけじゃない。


暴れた弘人のかかとが祐次のみぞおちにヒットしたからだった。