「なによ? はっきり言えば?」


「聡子、やめなさい。2人が、どうした?」


父親の声は優しいがその目は鋭い。


本当に祐次がまともかどうか、見極めようとしている。


くるみは祐次の手を握り締めた。


その手から勇気がわいてくるような気がして、祐次はさっき家で起こった出来事を説明した。


自分は2人を止めることができなくて、発狂して公園まで逃げたこと。


そこで冷静になるために頭から水をかぶったこと。


そしてくるみが来てくれたこと。


父親は黙って祐次の説明を聞き、母親は説明が終わった頃にバスタオルを持ってきてくれた。


「なるほど、わかった。確かに君だけは大丈夫そうだな。ソファに座りなさい」


「ちょっと、お父さん!?」


祐次が近づくと聡子は逃げるようにソファから立ち上がった。


聡子からすれば祐次は強姦未遂をした弘人の兄だ。


信用できなくて当然だった。


祐次は聡子へ向けて深く頭をさげ、それからソファに座った。


聡子はしぶしぶと言った様子で少し離れている床に直接座る。