自分みたいな人間がくるみと一緒にいることはできない。


これ以上くるみを巻き込むことはできない。


祐次は震える両手をくるみの肩に乗せ、そっと引き離した。


「家から飛び出していく祐次が見えて追いかけてきたの」


大きな目を潤ませて見上げてくるくるみを守りたいと思う。


だけど言葉を発せば感情があふれ出してしまいそうで怖かった。


「たいしたことじゃないんだ。驚かせてごめん」


ゆっくりと、静かな声で伝える。


「そんなことないでしょう? こんなに泣いてる」


くるみは涙か水かわからなくなっているハズの頬の水滴を指先でぬぐった。


そのぬくもりに思わずまた涙があふれ出してしまいそうになる。


祐次はそれを押し込めて、無理矢理微笑んで見せた。


「本当に大丈夫だから、くるみは帰って」


本当は送って行ってあげたいけれど、あの家の前を通ることになるからそれはできなかった。


あの家を見るときっとまた発狂してしまう。


「嫌」


くるみの意思は固かった。