狂った隣人たち

もうダメだ。


俺の家族はみんな壊れてしまった。


もう修復は不可能だ。


家を出て走って走って、近くの公園にたどり着いていた。


薄暗い街頭に照らされている公園には誰の姿も見えない。


祐次は水のみ場へ行くと低いほうの蛇口をひねって頭から冷たい水をかぶった。


肩で呼吸を繰り返してどうにか冷静になろうとするけれど、先ほどの光景が、ベランダから落下してくる母親の姿が、聡子を襲う弘人の姿が思い出されて感情が荒波を立てる。


「なんで……なんでなんでなんでなんで!?」


水にぬれながらくぐもった声を上げ、拳で自分の頭を殴りつけた。


涙はとめどなくあふれ出して冷たい水と混ざり合う。


「祐次!?」


公園の入り口から自分を呼ぶ声が聞こえてきて振り替えると、そこにはくるみが立っていた。


くるみは部屋着姿でサンダルという格好だ。


慌てて家からでてきたのがわかった。


「くるみ」


祐次は消え入りそうな声でくるみを呼ぶ。


くるみは今にも泣き出してしまいそうな顔で駆け寄ってきた。


そのままびしょぬれの祐次に抱きつくが、祐次はその体を抱き返すことができなかった。