狂った隣人たち

「あぁ祐次。今日はお父さんが料理をするんだ。お母さんがいないから」


「だったらキッチンでしてよ! カーペットが血まみれじゃないか」


異臭を少しでも軽減するためにリビングの換気扇を回す。


それだけではとても取れるような臭いではなかった。


「なぁ、頼むからキッチンに移動してくれ」


再度注意をしても父親はその言葉の意味が理解できないのか、包丁を片手に持ったままキョトンとした表情を浮かべている。


「なぁ、俺の言ってることわかるか?」


「あぁ、そうか。なるほど」


途端に納得したように何度もうなづきはじめる。


ようやく通じたか……。


そう思った次の瞬間だった。


「これを入れればおいしくなるんだな?」


そう言うと躊躇なく自分の指先ほ包丁で切断し始めたのだ。


「なにしてんだよ!」


慌てて止めに入るがもう遅い。