前回事件を起こした家族も同じ。


そしてその他の引っ越して行ってしまった家族も、同じ構成でできていた。


最初の頃はただの偶然だと思っていたけれど、近頃はそれもなにかあるのではないかと思うようになっていた。


なにがあるのかと聞かれれば答えようがないのだけれど、なにか、家が人を選んでいるような感じもする。


もちろん、そんなことはありえないとわかっているけれど。


「だってさ、2年前に引っ越して行った家族も同じだったじゃん。それで一ヶ月くらい隣で暮らしてたら急にうちの花壇を荒らし始めたんだよ?」


聡子は当時のことを思い出して怒りがわいて来たようで、箸を乱暴にカラアゲに突き刺した。


カラアゲからはジューシーな肉汁があふれ出す。


「同じ家族構成で引っ越してきて、みんな最初は印象がいいの。近所への挨拶だってちゃんとする。それがあの家に暮らしていると数週間とか数ヶ月でどんどんおかしくなっていってさ――」


「やめなさい!!」


母親の怒鳴り声が聡子の言葉をさえぎった。


聡子は一瞬目を見開いたものの、なにも言わずに食事を続ける。


重たい沈黙が降りてくる。


でももう私たち家族はみんなわかっていた。


隣の家に引っ越してきた人たちはみんなおかしくなって、なにか事件を起こし、そして引っ越していくこと。


そして私たちはその問題を先送りにしているということを……。