狂った隣人たち

☆☆☆

玄関を出ると、ちょうど祐次も家を出てきたところだった。


くるみはすぐにかけよった。


「祐次、昨日は大丈夫だった?」


その質問に祐次は驚いた様子で目を見開く。


「どうして警察に通報しなかったんだ?」


突然の質問に今度はくるみが驚いてしまった。


「昨日あったことは全部両親に説明したよ。玄関の鍵ももっと頑丈なものに替えてもらうことになった。だけど警察は……」


そう言ったきり黙り込んでしまう。


「もしかして、俺たち家族のことを気にしてるのか?」


その質問にもくるみは答えられなかった。


そうとも言えるし、そうともいえない。


隣の家で起こる事件は散々通報してきた。


今回だってきっとそうすべきなのだろうけれど、どうしてもできない理由があった。


くるみはゆっくりと歩き出す。


それについて祐次も歩き出した。


生ぬるい空気が2人を包み込み、なんとなく重たい雰囲気が降りてくる。


「祐次はあのあと大丈夫だったの?」


逆に質問を返されて祐次はとまどったように視線を漂わせた。


その反応はなにかがあったのだと理解させるのに十分なものだった。