バリバリゴクン。


硬いものを噛み砕く音が聞こえてきて血の気が引く。


「弘人、お前」


「なに?」


振り向いた弘人の口の中は真っ赤に染まっていた。


それでも口の中に虫入りの白米と茶碗の破片を入れ続ける。


バリバリ、ムシャムシャ。


「なぁおい、本当にやめてくれよ」


弘人の肩に手を伸ばすけれど恐ろしくてそこに触れることもできなかった。


「お母さん、お父さん、どうしちゃったんだよ!」


無心になって食事を続ける両親に声をかけても反応はない。


祐次は視界が滲んでいくのを感じた。


この家の中でまともな人間は自分しかいない。


そう感じた祐次はそこからも逃げるように自室へと駆け込んだのだった。