綺麗だ。大きな水槽を見上げる。 名前の分からない魚がすいすいと目の前を横切る。 「え、絹笠さんの実家って酒屋なんですか?」 「聞いてたのか」 「聞いてますよ!?」 「魚に夢中だったから」 優雅に笑われた。間違ってはいない。 「兄が継いだから、俺はこっちに出て来られた。感謝しかないな」 週末に水族館というベタなデートコースを歩む。 隣の絹笠さんも水槽を見上げていた。 「わたしも感謝します。もし、絹笠さんが酒屋さん継いでたらきっと会えませんでしたし」 そう考えると、偶然ってすごいかも。