「え」 徐に服を脱ぎだす。その手を掴み止めた。 「待て待て」 「暑い……」 「暑い……?」 ピークは過ぎたが、まだ冬の気温だ。暖房が強すぎたのか、とリモコンを手に取る。 少し目を離した隙に、ばさっと布地の落ちる音。 振り向けば、彼女は毛布に潜り込み眠っていた。 暑いのか、寒いのか。 もうどうでも良くなり、笑ってしまった。 「絹笠ー、この前の居酒屋代いくらだった?」 「……まだ払ってない」 「え」 エレベーター前で同期に話しかけられた。その答えに、ぴたりと動きを止める。