俺の世界には、君さえいればいい。





「ではこれより男子個人戦、決勝戦を開始いたします!」



みんな、みんなが見ている。

女の子だって男の子だって、保護者だって。


さっきはあんなにもすごい試合を見せてくれたんだから大丈夫だろうって。

今回はどんな試合を見せてくれる?なんて期待の眼差しで。



「───はじめっ!」



やめてほしい、無理しないでほしい。

だけど勝って、おねがい勝って。


でも負けたとしても好きな気持ちは膨らむばかりなの、きっと。



「ねぇやっぱり足庇ってない…?」


「あれ負けるんじゃねーの、櫻井だっけ」


「わりと押されてるよね…?えぇ~、なんかショック~」



いいでしょ、負けたって。

負けたらだめなの…?
完璧な櫻井くんじゃなきゃだめ?


せいいっぱい戦ってる。

怪我を庇ってまで、戦ってる。



「───…さくらい、くん、」



そして会場が湧き立った。

誰もが目を見張る決勝戦、どちらも譲らない試合は中々決着がつかず、勝敗は判定決めとなった。


相手は同じ高校の、櫻井くんの先輩で剣道部の部長さんだった。

個人戦の場合、仲間同士で戦うことは良くあることらしい。


粘った、耐えた、彼は最後まで諦めずに戦い抜いた。


それでも最終的な判定で旗が揚げられたのは───3年生の部長さん。