俺の世界には、君さえいればいい。





「うそ!審判ぜんぜん対応しないんだけど…!」


「ちょっとーーっ!今のぜったい反則でしょ…!!」



蹴られて、捻ったよね……?

それでも何事も無かったかのように櫻井くんが続けていることもあってか、試合は続行だった。


私のうしろで櫻井くんのファンと化してる女の子たちがブーイングのようなことをしても、選手たちの叫び声に消えてしまう。



「きゃーーっ!櫻井くん格好いい~~!!」


「さっすが櫻井くん…!あんな反則くらっても勝っちゃうなんて…!!」



それでも私は「さすが」とは思えなかった。

きっと無理している櫻井くんは、痛みを我慢してまでも勝利するために身体を酷使したんじゃないかって。


勝ってもらえて嬉しいはずなのに……本音は複雑だったりもして。


だって次は決勝だから、いま以上に無理をするに決まってる。



「櫻井くん…!」


「…由比さん、」



決勝前まで余った時間。

会場外の目立たないベンチに座っていた櫻井くんは、やっぱり左足を気にしていた。



「あ、足…大丈夫…?みんな反則だって騒いでたから…」


「…平気です。ちょっとズルいなとは思ったけど」