「なんか顔赤いんで…熱とかありませんか?」


「え、いや…っ、ないです…っ、これといって元気です…、はい…」


「…そうですか、よかった」



熱なんか櫻井くんを前にすると上昇してしまう……。

だって婚約者だよ…?

逆にどうしてそんなに涼やかな顔をしてられるんだろうって……やっぱり不思議だ。



「さ、櫻井くんは…今日も部活…?」


「はい」


「そ、そうなんだ…。頑張って…ください…」


「…ありがとうございます」



やめようやめようと思っても、結局は敬語になってしまう堅苦しさ。

昔からそういう礼儀作法は徹底して叩き込まれて育ったというのもあって。


それはきっと、櫻井くんも同じなんだろう。


けれど学校では不審がられないように普通の子を演じて、違和感を感じ取られないように地味に生きている私。

それでも目立ってしまう櫻井くん。


似ているようで正反対な私たちなのだ。



「じゃあ俺はこれで」


「あっ、はい…」



ぽーっと見入ってしまうくらい、なんていうか櫻井くんの動作には無駄がない。