冬休みになって数日目の祝日。

私がどうしてこんな珍しい場所に居るのかというと…。


良かったら試合を観にきませんか───?と、それは初めて櫻井くんから誘われたものだった。



「ここならよく見えるんじゃないかなって」


「え、こんなに前の席…いいの…?」


「はい、由比さんのために確保しておいた特等席なんです」



そんなことを言われてしまって嬉しくないわけがない。

朝からいっぱい心配してくれて、今朝だって試合があって忙しいのは櫻井くんなのに、電話とメールの両方をしてくれた。


小さく「ありがとう…」と返すと、少しだけ櫻井くんをまとう雰囲気が解れたように感じる。



「個人戦だから俺ももう少し時間あるんで…」



そう言いながら照れたように隣の椅子に座った櫻井くん。


会場となっている体育館には、色んな学校からの剣道部が集まっていて。

家族一丸となって応援していたり、選手は甲高くも力強い声を発していたり。


見ているだけで胸が熱くなってくる。



「俺、今日は由比さんのために…優勝します」


「えっ、優勝…?」


「はい」