そして表情ひとつ変えることなく、スタスタと通りすぎる櫻井くん。
素っ気ないというか……興味がまったくナシって感じ…?
そう、そんな人なのです。
私の婚約者となった隣クラスの人気者、櫻井 主計(さくらい かずえ)くんは。
不思議なことばかりだ。
そもそもどうして私と彼が許嫁関係になってしまったかというと…。
「……あ、由比さん」
「っ…!!」
「えっ、あんたなんで櫻井くんに名前覚えてもらってんの…!?」
私に気づくと必ず挨拶してくれるようになった櫻井くんの実家は、名のある剣道一家で、立派な道場を構えている。
もちろん彼はこの高校でも1年生ながらに剣道部の絶対的エースに選ばれていて。
そして私は、古くから代々伝わる日本を代表する和服ブランド───由比グループの一人娘。
昔から櫻井家とは関わりがあったらしく、両家のしきたりだって「より良い子孫を残すため」なんて、似た思想を持っていたこともあってか……。
これこれああなって、こうなって、そして今に至ったのだった。



