「まさか好きな人できちゃった!?」
「……ううん、ちがう」
「なぁ~んだ、面白い話が聞けると思ったのにぃ」
だって言えるわけがない。
実は婚約者ができてね、それがね、なんて言ったら校内ニュースどころの騒ぎじゃなくなる。
それは私だけのことだったら周りは「なに言ってんのあの人」にしかならない内容だけど…。
これは私だけの問題じゃないところが大問題なのだ。
「あっ、ねぇ櫻井くん来たよ…!今日こそはきっかけ作るんでしょ真理っ!」
「もち!今日こそは…!!」
廊下の角、ひそひそと作戦会議をする2人組の女子生徒。
その視線は少し先から向かってくる1人の男の子を見計らっていて。
そんな彼はいつも数人の男子に囲まれながらも、染まりきらない独特のオーラがある人。
───…そう、彼が私の婚約者でして。
「きゃっ…!あっ、ご、ごめんなさいっ!!」
「も、もう真理!なにやってんのあんたは…!ごめんねぇ櫻井くん…!」
まさかの、彼女たちが起こそうとした“きっかけ”は自発的に行われるものだなんて。