俺の世界には、君さえいればいい。





かなり頑張ってる。

私が敬語をやめれば、彼もつられてくれるんじゃないかって。



「はは、じゃあ雑用を頑張ってる由比さんを見に行きます」



わぁ、笑ってくれてる……。

すごい、ゆっこ、やっぱり櫻井くんは無表情プリンスなんかじゃなかったよ。



「さ、櫻井くんのクラスは何をするの…?」


「俺のところはお化け屋敷です」


「…櫻井くんもお化けになる…?」


「はい。楽しみにしていてください」



それって結果的に誘われてるよね…?

お化けはかなり苦手の部類に入るのですが…。



「由比さんは…取り柄が無くなんかないです」


「え…?」


「でも、もし自分でも分からなかったら…そのときは俺が見出だしてあげますから」



なんかすごい言葉を贈られちゃったような気がする…。


私の良さってなんだろう…。

唯一は、着物の着付けができることくらいだ。


でもこうして櫻井くんの隣を歩いたって、昨日までの気持ちとは全然ちがう。

今日からは周りの人に「お友達」って言える。



「───…ありがとう、櫻井くん」



私は、たぶん、この人に惹かれてる。


それは初めて話したときから……ずっと。