俺の世界には、君さえいればいい。





けれどそんなものを止めるように道場の入り口、耳に引っかかるような甘い声で彼の名前を呼んだ女子生徒がひとり。



「今日は部活ないよ?」


「…先輩は、なんで」


「部室にちょっと忘れ物しちゃって」



すっごくかわいい人だ…。

かわいいのに綺麗で、本当にモデルさんみたいで。

モデルというよりはアイドルかもしれない。


もしかして彼女が2年生のマネージャーさんの……横山(よこやま)さんなのかな。



「…って、ここは剣道部関連のひと以外は立ち入り禁止なんだけどなぁ~?」


「あっ、ご、ごめんなさい…!」


「もう櫻井、部長には黙っといてあげるけど。2回目はないよ?」



なんだろう…、なんか私をスルーするような会話だ。

まるで見てもいないような、私なんかそっちのけで櫻井くんと話している感じで…。



「あなたも簡単に入らないでくれる?それかマネージャー候補?下心ある子は歓迎しないよ?」



そして私に向けられたかと思えば、その視線より冷ややかな言葉だった。


下心って…。

そんなのないし、確かに勝手に入っちゃったのは駄目だったかもしれないけれど…。