俺の世界には、君さえいればいい。





まずはお友達から始めれば、自然と敬語だって取れるはずだ。

お互いのことだって関わっていくうちに知れるだろうし…。


そこから……もしかしたら、気持ちに変化があるかもしれない。

それはもちろん良い意味で。



「…嫌、です」


「……」



ゴーンというか、ガーンと、大きな鐘が頭の中で打ちつけられた。


まさかこんなにも呆気なく断られてしまうなんて…。

というより……この流れでそれはかなりの大打撃…。



「い、嫌……ですか…、そうですよね…、ご、ごめんなさい…っ」


「俺は、婚約者のままがいいので」


「───…」



反応に困ってしまった。

だけど私はたぶん、すごく喜んでいる顔をしていると思う。



「…お、お友達兼、婚約者じゃ…だめですか、」


「婚約者兼、友達…なら」



あまり変わらないんじゃないかな…。

その優先順位にこだわる理由はよく分からないけど、これは断られてるわけじゃない…?



「婚約者は…括弧(かっこ)書きで、」


「駄目です」



……櫻井くんは意外と頑固…?

そんなにも婚約者というものにこだわりがあるらしく、けれど今までとはどこか違う空気感があった。