「わ、私に何も取り柄がないから……だめなんです、」
「…由比さん、」
「地味だし、目立たないし…、ぜんぜん可愛くないし…っ、だから、櫻井くんに迷惑がかかっちゃうの……っ、」
「由比さん、」
気づけば櫻井くんは、私のすぐ目の前に来ていた。
思わず引いてしまいそうになっても、スッと伸びてきた手が頬に落ちる無数の涙を拾ってくれるから。
びっくりして身体が硬直してしまった。
「俺は由比さんの良いところ、知っています」
「…え…、」
「だけど、まだ、もっとたくさん知りたいとも思ってる。…だから、もっと仲良くなりたいです」
「な、仲良く……」
「はい」
じゃあまずは敬語をやめましょう。
櫻井くんから出てくる敬語は、すごく、なんていうかドキドキしてしまって駄目だ。
そういうところに誠実さが出ているんだろうなぁって思うけれど、友達といるときは違うから。
そのギャップを見つける度にいつも心臓が落ち着かなくて。
「あの…じゃあ…、お、お友達に…なってくれますか…?」
「…友達、ですか」
不安に思いつつも、こくんっとうなずく。



