俺の世界には、君さえいればいい。





「どうぞ」


「……え…?」


「これ、どうぞ」


「あっ、え、…はい、」



スッと渡されたものは竹刀だった。

思わず受け取ってみると、想像していたよりも軽く感じた。


だけどやっぱり重みもあって、それは重量感からくる重みとはまた違う印象のものだ。

毎日これを握ってお稽古しているんだなぁ…って感心してしまうような。



「では叩くなり突くなり斬るなり、好きにしてください」


「……えっ!?」


「遠慮なんかしなくていいんで」


「えっ、だ、だめですよそんなの…!できないです…!」



なにを言ってくるかと思えば、この竹刀で私が櫻井くんにそんなことをしろって……。

できない…っ。

そんなの絶対だめ…!!


ぶんぶんと首を横に振って、そんなつもりはないと示すために竹刀を床に置いた。

それでも彼はどこか腑に落ちないようで眉間をぐっと寄せている。



「……由比さん、」



かと思えば、眉を下げて寂しそうな顔に変わってしまった。

床をなぞるように落とした視線はふっと私に移って、震える声で小さく続けられる。