……ということは、まんまと罠に嵌められてしまったということだ。
渡されたプリントもとくに意味はないものだそうで。
私に逃げられ続けた彼だから、ここまでしなければちゃんと話し合えないと思ったのだろう。
「で、でも私…部外者だから入っちゃだめなんじゃ…」
「俺が許可します」
「……」
1年生なのに…?
部長さんでもないのに、そんな勝手なことしちゃってもいいのかな……。
だけど彼の家柄を考えると、うん…別になんの問題もなさそうだ。
むしろ全国剣道協会の会長と関わりがあるくらいのレベルなので。
「し、失礼します…」
深々とお辞儀をしてから、そっと中へ上がる。
わりとつるつるな床と木の匂いに包まれた道場は、いつも竹刀のぶつかり合う音や部員たちの声が響く場所なのに。
今日はしんと静まり返っていて、すっごく落ち着かない…。
「そこに座ってください」
「は、はい…」
これはもう言われたとおりに。
もしかすると彼は今までにないくらい怒っているのかもしれない。
そんなの……心当たりがありすぎて。
これはもう怒られたほうがいいかと諦めていた。



