昇降口で待っていてくれたときは、そんな理由をくっつけて校舎内に戻る。

そう、避けに避けまくっていた。


そろそろ言い訳が尽きてきた……。
でもなんとか誤魔化さなくちゃ。

それで愛想を尽かして、こんな女の婚約者は願い下げだって……なってくれるように…。



「ゆ、」


「あ…っ!えっと、あっ!てんとう虫と戯れなくちゃ…っ」


「いっやそれはいくらなんでも無理すぎでしょ…!!もう櫻井くん、“ゆ”しか言えてないじゃないっ!!」



そんなこと言われても…っ。

頭の中ではいつも100回はごめんなさいって言ってるんだよ…。


毎日毎日こうして声をかけてくれるのは本当に嬉しいけれど、そんなところを周りの子たちに見られちゃ駄目だから。

それで悪く言われるのは私だけじゃなくなってくるかもしれない。



「由比~、悪いがこれ、剣道部の顧問に届けてくれるか?」


「えっ…私ですか…?」


「あぁ、剣道部の道場にいると思うから頼むわ」



どうして私に……。

そう言おうとしている間には、すでに担任は背中を向けてしまっていて。