まさか人気者の彼があんなにも柔らかく笑ってくれるとは思わなかった。
私なんかに話しかけてくれるとも。
「由比さん、さっきの大丈夫でした?」
「ぴゃっ!」
……とんでもない声を出してしまった。
ぼーっと思い出を読み返している最中に、まさか本人さんの声が混ざってくるとは…。
びっくりしすぎて肩が跳ねるだけじゃなく面白い声が出た…。
でも「ぴゃっ」って……そんな反応、いまだかつて人間から出ているところを聞いたことがない。
「…ふっ、」
そして笑われてしまった……。
すごい、ぜったい引いてる…。
どうしよう…穴があったら入りたい…。
「あっ、えっと、だ、大丈夫です…」
「草で…手とか、切ってませんか?」
「は、はい…」
だめ、こんなところを見られちゃだめ。
今はみんな飽きてしまって散らばってるし、たとえ私は校舎前の目立たない端っこに居たとしても。
それでも決めたんだから。
「む、向こうで友達が待ってるので…!失礼します…!」
「あっ、由比さん…!」
シュタッと立ち上がって、疾風のごとくタタタタタタッと。



