「あーもうっ!ジャージ汚れたぁ!」


「ふふっ、でも綺麗に取れてよかったね」


「かなの大丈夫?…お嬢様だから家の人とかに怒られない…?」



コソッと誰にも聞こえない声で耳打ちをしてくる。

もう…普通に接してって言ったのに。


だけどそんな心配もゆっこらしくて、微笑ましく思いながら「楽しかった」と答えた。



「ん?どうした主計、」


「……いや、なんでもない」



背中では櫻井くんとお友達の会話が聞こえてくる。

だけど私は聞こえないふりをした。
それが先日までの私とは違うことだ。


極力関わるのはやめようって。

みんなのために、彼のために、やめようって。



「あっ、てんとう虫…」



赤色だ…。

小さな斑点色は、「自分を殺さないで」と危険信号を出すためにその色をしているらしい。


初めて櫻井くんと話したあと、個人的に調べたことだった。



「ゆっこ見て、てんとう虫がいるよ」


「わー、ほんとだ。かわいー」


「あっ、わっ、…止まった」



器用に羽を動かしたてんとう虫は、私の手の甲に止まった。

びっくりさせちゃわないようにゆっくり動かして、もっと近くで観察。