「やめてほしい……鼻につく…」



そんなふうに思われているなんて知らなかった。

家ではいつもみんなが喜んでくれて、お父さんもお母さんも「仲良くね」と嬉しそうで。


それに応えることが私の使命のようなものだとも思ったりして、それはもちろん櫻井くんも同じ。

だからこそ、昨日の言葉はすごくすごく嬉しかった。



「…そっか…、そうだよね、」



これなのだ。
櫻井くんに迷惑がかかってしまう。

けれどもし、私が由比グループの一人娘だということを全校生徒に知られてしまったら。


きっと生徒たちはガラッと態度を変えるんだろう。

でもそれは、みんなの目が“由比グループの一人娘”を見る目に変わるだけ。


そんなもの、私はこれっぽっちも嬉しくない。


だけど家柄を言わなくても人気者になれてしまう櫻井くんは、やっぱり私とは正反対。

きっと私はそんな彼に憧れていた部分もあったのかもしれない。



「はいでは今日はA組とB組の合同授業になるわけだが───お前ら!これは遊びじゃないからな!」


「どうせ雑用だろー」


「ちなみに草むしりは成績に響かせるぞ」


「マジ?ならオレ毎日草むしりするからテスト免除してくださーい」