相変わらずな彼と、相変わらずな私。
高校2年生になって2ヶ月が経過した今もとくに変わりなく。
やっぱり噂というものはいつまで絶っても途絶えないものらしい。
「でも櫻井先輩ってかなり有名な家柄なんでしょ?相手の人って何者なの?」
「さぁ?とくにお嬢様って話も聞かないし…わかんない」
私です、それはここにいます。
いまぶつかった地味な女が相手の人です。
こうして噂に対して心の中で答える毎日は、ちょっとだけ私のひとり遊びのようなものになっていた。
放課後、先生から頼まれた段ボールを家庭科室に運び終わると、今度は花壇の水やり。
ゆっこには「そんな雑用やらなくていいって!」なんて言われるけれど、これは私から名乗り出ているようなものだから。
「あっ、てんとう虫…」
赤色と黄色、花壇に咲く青紫色をしたネモフィラに混ざるように2匹が仲良く花びらに乗っかっていた。
こうしていると去年の今頃を思い出す。
「───キイロテントウは赤色よりいい意味があるんですよ」
「ぴゃっ!」
ふわっと背中から回るように、首元に優しく加わった重み。