櫻井くんに視線を戻す。
見上げるように合わせると、私のタイミングをずっとずっと待ってくれている目があって。
もうぜんぶが大好きだなぁって。
「よ……、よろ、しく……おねがい、します……、」
こんなにきれいな花が世の中にあるのかと思った。
枯れてしまうのが勿体ない。
だけど、この花はきっと、枯れない。
黄色と赤色をメインに使われていて、それはてんとう虫みたいだった。
泣きそうに、それでも喜びで溢れながら差し出してくれる花束を受け取って、ぎこちなくも深々と頭を下げる。
「いやいやいや!!嘘でしょ…!?!?なにこれエイプリルフール!?」
「だって結婚前提って……!!普通に付き合うならアレだけどさぁ……、そんなの勝ち目ないじゃん!!!」
「婚約者ってことだよね……!?由比さんと櫻井くんがぁ!?!?」
私の家は、日本を代表する由緒正しき和服を取り扱う由比グループ。
そんなものを隠しながらの告白を櫻井くんはしてみせた。
だからこそ納得の出来ない不信ばかりの声が上がる。
「まぁそういうことなんで。春休みが明けたら広めといて、皆さん」
ううん、こんなの春休み中に広まっちゃう。
情報なんかすぐに回ってしまう今の時代だ。
SNSや、クラスを通しているグループチャット。



