「え、あたしじゃないの…?」


「いやいや私じゃん…!櫻井くん…?私に話したいことがあるんでしょ…?」


「どういうこと…?」



困惑が広がっているなか、私はゆっくり椅子から立ち上がって櫻井くんの前に立った。

ドクドクドクドクと小刻みに震える心臓、ぎゅっとこぶしを作った手は胸の前。



「さ…くらい…くん、」



今までの人生でいちばん緊張してるかもしれない…。

けれどそれは櫻井くんからも感じ取れる同じ気持ちだ。


そして櫻井くんは、私の前に色とりどりの花束を差し出してくる。


そこで、きゃーーーーっ!!と、教室中が女の子の声に包み込まれて。



「うるっさい!!いいとこでしょ!!黙ってあんたら!!!ムッツリ頑張ってんだから…!!!」


「そうだっ!!主計が花束だぞ!?あいつあんな冷静取り持ってるけど買うときもぜってぇ頑張ったんだよアレ…、花より顔赤ぇもん!!!」



「……あいつら、」と、櫻井くんの低い低い声。

けれど私の目の前に立つ櫻井くんは私が大好きな表情をしていた。


真っ赤で、眉をぎゅっと寄せて、目はキョロキョロ動いてて、本当にいっぱいいっぱいの顔。


思わずふふっと笑ってしまうと、スッと覚悟を決めたように目を合わせてくる。