「嫌いに…ならないで……っ、横山さんのほうに行かないで…、助けて、くるしい……っ」
苦しい、すごく苦しいの。
嘘をついて離れることも、好きな人の幸せが一番だなんて強がることも。
櫻井くんが笑顔でいられるならそれでいい、なんて格好つけることも。
好きな人なら自分が幸せにしてあげたいに決まってる。
一緒に幸せになりたいに決まってる。
櫻井くんと出会って、本当に毎日がキラキラしてたんだよ。
隅っこばかりを探していた毎日が、櫻井くんを探す毎日に変わって。
櫻井くんも同じなのかなってひとつひとつ自惚れていく度に、それだけで幸せを感じられるくらい。
私はあなたが大好きで、この上なく大好きで、それでも大好きだから、やっぱり傍に居たいし居てほしい…。
「───……っ!!」
気持ちを言って、どうして欲しいか言ったのに…。
私はなぜか、今まで人生のうちで感じたことのない柔らかさに包まれていて。
それは櫻井くんに唇を奪われてしまっているということで。
とくべつ反応できず、ぼーーっと放心状態でいると、合わせられた初めての甘さと柔らかさにびっくりして意識が戻ってくる。
「んっ…!んん、さっ…くら…っ、く…っ」
だらんっと全身は脱力。
それをいいように、そのまま櫻井くんは私をふわっと浮かせてベッドに寝かせた。



