俺の世界には、君さえいればいい。





「…由比さんのガトーショコラ、食べたかったな俺」



どうして知ってるの…?
誰が教えたの…?

私のガトーショコラを食べたのは、ゆっこだけだ。

……ゆっこが教えたんだ。



「あの日、待ってたんです俺。…由比さんからバレンタイン貰えるの」


「っ…、」



じわっと瞳いっぱいに浮かんだ涙。


待っていてくれたこと、たくさん待たせてしまったこと。

一緒に帰ろうって言ったのは私なのに、帰れないって断ったのも私。


自分のことを考えると悲しくなるけど、それ以上にそのときの櫻井くんのことを思うと胸が痛くなる。


待っててくれたのに…私からのチョコを楽しみにしていてくれたのに…。



「ごめんね…、ごめんなさい…っ、」



私も貰って欲しかった。

好きって伝えたくて、何日も前から予行練習していた。

お風呂の中でも、寝る前も、夢の中でも。


だけど櫻井くんのその怪我だって、本当なら負わなくていい怪我だったんだよ。


私は鼻につくらしいから、どうしても誰かの反感を買ってしまう。



「…俺にどうして欲しいですか、…離れて欲しいですか、もう2度と喋るな近づくな気持ち悪いって…思ってますか、」


「や、やだ……っ」