その質問の意味が分からない。
だから、そんなの答えたくない。
答えられない、そんなのは。
まっすぐ見つめてくる櫻井くんの目を逸らしてしまうと、パシッと腕が掴まれた。
それは「帰さない」と言ってくるみたいで、そのためにここまで誘き寄せられたのではないかと、今さらながらに思ってしまう。
「俺は由比さんが思ってるより…たぶん、強いです。だからどんな仕打ち受けても平気で、むしろ余裕があるくらいで、」
それは知っている。
櫻井くんには剣道だけじゃない強さが備わっていて。
心の剣───とでも言うのかな。
彼の中にはまっすぐ折れない剣が存在している。
それは、前に病院で出会った女性にも同じことを思った。
「逆に由比さんを守れるんですよ、俺は」
「それは…っ、横山さんを…守ってあげて、」
「ぜってえ嫌だ。あっ、嫌ですそれは」
訂正したって遅い。
すっごい低い声が聞こえた。
「だから俺は、由比さんが望めば…由比さんの剣に…、なれるんです、」
私はそういうつもりで聞いていなかったけれど、櫻井くんのちょっと照れた表情とか。
様子を見ながら伝えてくる仕草とか。
確かにあとから考えれば、ちょっとキザな決め台詞みたいに聞こえた。



