それを見てしまったら私の中の何かが手遅れになっちゃうような気がしたから。
『なにも知らない素人のくせに勝手な判断しないで!!!』
『…もう櫻井には近づかないでくれる?また同じことされたら困るから』
でも横山さんのほうがきっと、もっとスムーズで上手だよ櫻井くん。
どうして私をここまで連れて来ちゃったの。
賞状、トロフィーにメダル。
たくさんの功績が飾られた櫻井くんの部屋は、どこを見ても櫻井くんだらけ。
「───…よし、できた、」
「…治りました、」
「な、治った…?」
「はい、これで治った気がします」
それはプラシーボ効果ってやつだ。
言ってしまえば思い込みなのだけど、たとえば何か特別なことがされれば治ったような気持ちになって脳がそう判断する。
すると本当に怪我や病気が治っているというものだ。
本当にそういうものはあるらしいから侮れないけど、櫻井くんはそれとはまた違った意味合いで言ってくれたのかなって。
それは私のしてはいけない期待だった。
「じゃあ…帰ります、今度こそお大事に、」
「由比さん、俺にどうして欲しいですか?」



