「さ、櫻井くん……!?」
迷うことなく戻った。
足首だ、アキレス腱のところだ、痛みが戻ってしまったんだ…。
無理して戦っちゃうくらい耐え抜くことが出来る人なんだろうけれど、もう少し負担をかけていたら断裂していたところだったのだ。
きっと今だって我慢してたに決まってる。
「大丈夫!?櫻井くん…っ、救急車、救急車呼ぶね…!」
「大丈夫です、あの…手、貸してもらえませんか、」
「あっ、うん…!肩っ、肩に回していいから…!立てる…?」
どうしよう、支えられるかな…男子高校生ひとり。
もっと鍛えておけば良かったかも…。
テーピングとか湿布とかだけじゃなく、今みたいないざというとき抱えられるように。
「……えっ、」
だけど、私を捕らえた櫻井くんは。
肩に回すことなくスッと起き上がって、ガシッと私の手を掴んで。
そのままスタスタと自動改札機へ向かってゆく。
「さ、櫻井…くん……?」
「…痛いです、ほんと痛い、ふらっとなりそうなんで……手、つないでもいいですか」
「あっ、……はい、」
でも、これ櫻井くんがリードしてるよ…?
こういうときって私が手を引くものじゃないの…?



