先生と生徒。

なんか考えただけでドキドキしてきちゃうけど、私はゆっこの恋を応援する。


季節はどんどん巡って、1日1日が本当に早く感じて。

気づけば桜のつぼみが膨らみ始めて、だんだん春の暖かさが近づいていた。



「───由比さん、」


「…、」



その日、学校の最寄り駅に櫻井くんが立っていた。

すこし前から気づいていて、だけど見られないように通り過ぎようとしたのに。


久しぶりに呼ばれた名前だった。



「風邪は、もう大丈夫ですか」


「っ、」



大丈夫だよ、お見舞いありがとう。

あの白玉ぜんざいすごく美味しくて、新発売のスイーツも一緒に食べたかったなぁ…。


言いたいけど、言っちゃだめだから。
こんなところを生徒たちも見てる…。

けれどもう横山さんと仲良くやってる噂が広まっていることもあってか、そこまでだった。



「っ…、」



ごめんね櫻井くん。

そう伝える代わりに勢いよく頭を下げてから改札へ走る。



「いった……っ!!」



と、そんなとき。

自動改札機へ向かった私を引き留めた声は、櫻井くんらしくないもので。


すぐに振り返ると、しゃがむように左足首を押さえる姿。