「そんなときに傍に居てあげられないのは、母親として失格なんだろうね私」
「…そんなこと、ないと思います…、そうやって心配してくれてるだけで、きっと子供さんにも伝わってるはずです、」
「そうかな?…君のような女の子が傍にいてくれたら安心なんだけどな」
「あはは、私なんか…全然だめなので…、」
初対面の人と話すときは必ず緊張してしまって言葉をうまく届けられない私なのに。
どうしてか、この女性に対しては違った。
「好きな人を…悲しませて、傷つけてばかりいますから」
「…どうして?」
「私のせいで…私が、こんなんだから…、周りの反感が大切な人に向かってしまったんです」
こうして話せちゃうのが不思議。
ほら、世の中ってやっぱり不思議なことばかりだ。
「…うちの子はそんなにヤワじゃないよ」
「え…?」
「ううん、…こうして話せて良かった」
そんなタイミングで受付パネルに私の番号が表示された。
軽く頭を下げて立ち上がった私は、彼女がまだ何か続けていたような気がして受付に向かいながらも振り返る。
「あの子は確かに私に似て扱いづらいかもしれないけど、私と同じで人を見る目だけはあるから。
だから信じてやって欲しい、───…私の息子を」
その優しい微笑みが、私が大好きなものに、よく似ていた───。



